JRAモーリス産駒苦戦も「ノーザンファーム」は想定内!? 大物ルペルカーリア、セブンサミット惨敗も「日本の悲願」凱旋門賞(G1)制覇へ“特別な存在”
「ルペルカーリア、お前もか」……。
これまで様々な識者やメディアの間で言われてきた事ではあるが、ルペルカーリア(牡2歳、栗東・友道康夫厩舎)に騎乗した福永祐一騎手が「瞬発力勝負では分が悪い」と語ったように、モーリス産駒には総じて「切れ味」がないようだ。
またセブンサミットを管理する石坂正調教師も、レース後「最後はジリジリとした脚になってしまいました」と話しており、ルペルカーリアを管理する友道康夫調教師も「まだ馬体も成長途上で、トモにも緩さがある」と、やはり瞬発力のなさを裏付けるようなコメントをしている。
ただ、これには母方の血統も大きく影響していると思われる。
先週までに勝ち上がったモーリス産駒は14頭。カイザーノヴァのみが2勝しており、通算15勝となる。勝ち上がり14頭中、欧州の大種牡馬「Sadler’s Wells」のクロスを持った馬はカイザーノヴァとストゥーティのみ。カイザーノヴァは函館、札幌と洋芝で2勝しており、ストゥーティの勝利は雨中の競馬で稍重馬場だった。
その他の勝ち上がり産駒は全て「Sadler’s Wells」のクロスを持っておらず、スタミナが問われる欧州で成功したSadler’s Wellsの血が、スピードが重視される日本での活躍を妨げている結果になっているともいえそうだ。
ただ、そんなモーリス産駒の「個性」も、ノーザンファームは把握していたのではないかと記者は言う。
「切れがなく、苦戦するのは想定内だったと思います。モーリス産駒の勝ち上がり馬にノーザンファーム生産馬が多いのは、モーリス産駒の特徴を予測していたからに他ならないのではないでしょうか。
ただ、まったく見方を変えればSadler’s Wellsのクロスを持った馬は“特別な存在”とも言えます。Sadler’s Wellsの血は、日本の悲願である凱旋門賞(G1)には有利な血統で、地力で日本のG1を制するようなら、その先の凱旋門賞制覇は過去に挑戦した馬よりもチャンスが大きいのではないでしょうか」(競馬記者)
確かに、モーリス産駒の勝ち上がり14頭の内、10頭はノーザンファーム生産馬。馬名登録されているモーリス産駒35頭の内、母方にSadler’s Wellsを持っている馬は6頭と貴重な存在だ。
デビュー前から大きな注目を集めたセブンサミット、ルペルカーリアは、この6頭の内の2頭である。
モーリスを管理した堀宣行調教師が「レースの流れが緩むと行ってしまう恐れがあった。だから、ワンターンの1600mがよかった」と話したように気性面での問題からマイルを使われていたが、古馬となってからは気性の改善が見られ凱旋門賞への挑戦も囁かれていた。
父ほどの気性の荒さが見られない産駒なら、その夢を継いで凱旋門賞に出走する可能性も十分にあるだろう。大きな宿命を背負った“特別な存在”は、日本の英雄となれるのか……そのためにも、まずは日本での活躍に期待したいところだ。
そして、日本の悲願へ――。
モーリス産駒の挑戦は、まだまだ始まったばかりだ。