JRA武豊は「真っ向勝負」すら許されない!? 凱旋門賞(G1)悲願達成の障害は、エネイブルら「2強」以外に「世界の名門厩舎」A.オブライエンの“圧力”か
「夢に向かって行ってまいります」
今年はコロナ禍の影響で帰国後に2週間の自主隔離をしなければならない。その影響で秋華賞(G1)までの期間は実質的に騎乗停止になる。それでも、フランスに渡航する価値があると考えているほど、凱旋門賞制覇はレジェンドにとっても悲願だ。
自身のホームページの日記で「相手は強いですが、番狂わせを演じてくるつもりで行ってきます」と意気込みを語っていることからも、熱の入れようが伝わってくる。
武豊騎手が騎乗を予定しているジャパン(牡4歳、愛・A.オブライエン厩舎)は、昨年の凱旋門賞で4着に入った世界屈指の実力馬。日本の馬主・キーファーズが「武豊で凱旋門賞制覇」を目指し、クールモアグループと共同所有した馬である。今回、キーファーズの意向が尊重され、武豊騎手での参戦が実現したというわけだ。
過去の凱旋門賞で武豊騎手の最高着順は、フランス調教馬サガシティで挑んだ2001年の3着。実は、ジャパンはサガシティの甥にあたるという不思議な縁もあり、武豊騎手を後押しするかもしれない。今年こそは悲願達成に期待がかかる。
しかし、それ以上にやっかいになりそうなのが、ジャパンがA.オブライエン厩舎の所属馬という点だ。
16年の凱旋門賞はA.オブライエン厩舎のファウンドが優勝。さらに2着にハイランドリール、3着にオーダーオブセントジョージと、同厩舎の管理馬が上位を独占した。この結果の裏には、“チームプレー”が存在したことを見逃せない。
それはレース当日に内柵を撤去することで内ラチ沿いに”グリーンベルト”が現れること。ただ、無理に内を走っても、包まれるリスクが残ります。その課題を解決したのが“チームプレー”です。
同厩のハイランドリールとオーダーオブセントジョージが先行して、ファウンドの進路を確保。その後方を走ったファウンドは内々で脚を溜めることができ、最後の直線は鋭く伸びて優勝を飾りました。ファウンドの勝利と同時に、A.オブライエン厩舎の勝利とも呼べる内容でしたね」(競馬記者)
今年もA.オブライエン厩舎はジャパンを含む5頭が出走を予定している。大本命のラブ、パリ大賞典(G1)の勝ち馬モーグル、英ダービー(G1)の勝ち馬サーペンタイン、昨年の愛ダービー馬ソヴリンと、豪華なメンツが揃った。
そこで気になるのが、陣営の作戦である。
「間違いなく大本命はラブ。2番手はモーグルに思われます。陣営はラブを勝たせるための作戦を練ってきますよ。ペースメーカーとして出走した英ダービーを逃げ切ったサーペンタイン、先行力のあるソヴリンは、レースメイクに徹するのではないでしょうか。
正直、近走の成績を考えれば、ジャパンの序列は低いはずです。もしかすると、武豊騎手には“チーム・オブライエン”としての役割が求められるかもしれません」(同)
A.オブライエン厩舎のマジカルは凱旋門賞の出走を回避。そのため、近走不振のジャパンがチームプレイの頭数として出走する可能性も考えられる。もし仮にそうだった場合、騎乗するチャンスをもらった武豊騎手にとっては恩がある。勝つための勝負をすることが叶わず、夢が遠のくことになってしまうかもしれない。
これについては凱旋門賞の騎乗オファーがあった際に、武豊騎手が公式サイトにて「馬の状態に納得がいかないときは絶対にゴーサインを出さない人なので、逆に言えばそれが出たときは好調モードに入ったということです」と評したオブライエン師を信じるほかない。
だが、ジャパンの所有権はキーファーズが半分所有。他の4頭はクールモアグループが100%の所有権を持っているという点で決定的な違いがある。そのため、キーファーズの意向が尊重されれば、武豊騎手はチームプレーとは別で単独行動ができることになるだろう。
世界最高峰の舞台で、武豊騎手がどのような騎乗を見せるかも見どころのひとつかもしれない。