【秋華賞・デアリングタクト偉業への戦略】有観客競馬で精神面にどのような変化が起こるのか
【〝闘券〟難波田記者が迫る・デアリングタクト偉業への戦略④】「パドック、返し馬の馬場入場の際にお客さんっていっぱい入ってこられるんですかね?」
デアリングタクト担当の池水助手から、そんな逆取材があったのはJRAが東京、京都、新潟開催の開幕週から限定的にファンの入場を再開すると発表があった直後のことだった。
「パドックは見られる位置が決められているし、馬場もスタンド内からしか見られないみたいですよ」と返したら、池水助手は安堵の表情を浮かべていた。
気性面に不安を抱えるデアリングタクトにとって、春2冠時の「無観客競馬」はいいほうに作用していたことは否定できない。とくにオークスではパドックでの発汗が目立ち、輪乗りのときまでかなりイレ込んでいた。仮にスタンド前発走で例年のようなファンの大歓声が湧き起こっていたとすれば、管理する杉山晴調教師が常に危惧している「(変な方向に)リミッターが外れてもおかしくない」状態に陥った可能性も…。
今回の舞台は栗東トレセンから近場の京都。輸送のリスクを最小限に軽減できる上、ファンが入場できるといっても限定的なら影響は少ないとみていいのではないか。
3月からトレセン内は取材規制が敷かれ、牝馬、牡馬とも無敗の快進撃を続ける状況下でも過熱ムードはなかった。要は馬にとってリラックスできる環境が整えられていたわけだ。次週の菊花賞を含め、歴史的瞬間に立ち会えるのはごくわずかなファンだけとなるが、誤解を恐れずに言うなら、コロナ禍におけるマスコミの取材規制、無観客競馬&入場制限と、牡牝とも無敗の3冠馬が誕生しそうな状況に、因果関係がまったくないとは言い切れないのかも…。
ファンの熱気に包まれたGⅠ独特の雰囲気に、のみ込まれてきた馬も過去には確かにいた。真の強者はいかなる状況でも強い? それも価値基準のひとつではあるが、デアリングタクトにとっては例年にない特殊な状況が、牝馬3冠の偉業への大きなアドバンテージになっているのは確かだろう。