JRAが「新エリア」限定競走新設へ前進。「持ち帰って検討するところまで行きました」オルフェーヴルの「ライバル」へ期待高まる
先週15日(土)小倉9レースのフェニックス賞(OP)では、九州産馬であるヨカヨカ(牡2歳、栗東・谷潔厩舎)が2着に1馬身半の着差をつけ快勝。九州産によるフェニックス賞の勝利という、1998年コウエイロマン以来の快挙を成し遂げた。さらに、熊本県産の平地オープン勝利はグレード制導入後としては初。九州エリアの馬産地が盛り上がりを見せている。
しかし、日本最大の馬産地と言えば、周知の通り「北海道」。一般的に生産規模が小さい「九州」の産駒は、北海道産に比べ競争能力が劣っている事が多いのが現状である。ヨカヨカが話題を呼んでいるのは、九州産でありながら北海道産混合レースで新馬戦、オープン特別と連勝した事にあるのだ。
「北海道産混合レース」と書いたが、それがJRAにおける一般的なレースであり、それとは別に「九州産馬限定競走」というレースも存在する。生産規模が小さい「九州」での生産を奨励する目的とし、JRAでは小倉で行われる2歳戦の一部を「九州産馬限定競走」として行っているわけだ。
そんな中、「北の馬産地でも限定レースを……」という動きが注目を浴びている。それが「東北産馬限定競走」というわけだ。
青森県十和田市(とわだし)でスプリングファームを経営する佐々木拓也氏は、17日(月)SNSにてJRA(日本中央競馬会)、JBBA(日本軽種馬協会)との生産地懇談会を行ったと報告。「今年は昨年以上に『東北産馬限定レース』について討論がなされ、JRAさんが持ち帰って検討するところまで行きました」と綴っている。
あまり知られていないが、東北産馬と言えば古くはテンポイント、トウショウボーイとともに、3頭の頭文字を取って「TTG」と称された「緑の刺客」グリーングラス。2001年の阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)を制し、その年のJRA賞最優秀2歳牝馬を受賞したタムロチェリーなどが有名だ。
次のページ まだ議論を重ねる必要がある段階だが…
ちなみにWebサイト『Pacalla』によると、東北エリアと九州エリアで馬産を行っている牧場は、一昨年の9月14日時点で以下の通り。
青森県生産牧場数: 39
岩手県生産牧場数: 2
秋田県生産牧場数: 1
宮城県生産牧場数: 8
福島県生産牧場数: 2
東北エリアの生産牧場総数: 52
鹿児島県生産牧場数: 13
熊本県生産牧場数: 11
宮崎県生産牧場数: 6
九州エリアの生産牧場総数: 30
あまり馴染みのない馬産地としての東北エリアであるが、実は九州エリアよりも多く馬産を行っている牧場が存在しているのだ。
「九州でも競走馬が生産されているのを知っているファンが多いのは『九州産馬限定競走』があるから。もし『東北産馬限定競走』が誕生すれば、東北の生産馬も注目される存在になるでしょう。JRAでは福島競馬場や新潟競馬場がレース開催の対象になるかもしれません」(競馬記者)
佐々木氏の言葉通り、現状ではまだ議論を重ねる必要がある段階だが、果たして「東北産馬限定競走」は実現されるのか……。ウインバリアシオン産駒の活躍が、その一端を担っているのかもしれない。